【結side】

裏切り者なんか平気で海に沈められる。

怪しいものは徹底的に拷問して吐かせる。

敵対勢力はどんな手を使ってでも潰す。

幼少期から孤児院で育ち、15で組長に拾われ、17で若頭まで登り詰めた俺は、いつからかそんな世界にすっかり染まっていった。

冷たく凄惨な世界だと思う。

しかしそれは、組をデカくするためには必要なことだ。

「若。怪しげな女が事務所の前に」

下からの電話で突然そう告げられ、俺は参った。

「分かった」

男なら拷問して吐かせるけど。

女か……

正直扱いずらいんだよな。

最近の敵対勢力である雷狂組の人間が数日前から俺の命を狙っている、という情報があった矢先での怪しい人物。

雷狂組が送り込んだ人間かもしれない、と下の奴らは特にピリピリしていた。

でももしこいつが向こうのアジトを知っていたらこっちが有利にことが進むだろう。

と言っても相手は女。

しかもひ弱そうな女だった。

「相手は女だ。手加減してやれ」

「はい」

地下室で監禁し、2、3日食べ物を与えなければ簡単に口を割るだろう、と考えていた。

しかし…

「若。あいつ全然口割りません。もう少し拷問した方が​────」

「分かった、俺が変わる」

「え、若直々にですか!?」

「すぐ済ませる」