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「お世話になりました」

「でもほんとにいいのか……?」

「はい。前から決めていたことなので。失礼しました」

立て付けの悪いドアをパタン、と閉めて、学園長室を後にした。

​────高校3年・8月上旬。

夏休みを目前に控えた今日。

私は高校に退学届を提出した。

18歳の誕生日を迎える2月2日まであと半年。

高校卒業後、時期に就活(・・)を始めるであろう生徒もチラホラといる中、私は着々と終活(・・)を進めていた。


持病のこともあってみんなと同じように運動は出来ないから高校入学時に事情を話して、体育の授業は毎時間見学をさせてもらっていた。

先生たちも優しく親切だったし、2年ちょっと過ごした学び舎とお別れするのは少し寂しかったけど幸い別れを惜しむ友達は、私にはいない。

なんの未練もなく、帰路に着いた。

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「はぁ…はぁ……」

帰路の途中。
胸が苦しくなって、電柱に身を任せてしゃがみ込んだ。

少し歩いただけなのに、簡単に息が上がってしまうのだから持病が悪化していることは、認めざるを得なかった。

「ケホ……ッ、ケホ…ケホッ……」

左胸を両手で押えて、なんとか落ち着くのを待つ。