私の居心地まで考慮してくれているなんて、​思ってなくて逆に申し訳なくなった。

「分かりました」

────この部屋は高層マンションの最上階。

鍵は外側からも掛けられているから逃げることは不可能らしい。

基本的に下の階にいるって言ったけど下の階どころか、聞くところによるとこの高層マンションは全て霧矢組が買い取っているものらしい。

どれだけ大きな組織なんだろう。

あ、そうだ。

そこで私はずっと聞かなきゃ、と思っていたことを思い出して真柴さんに尋ねた。

「あの、私のトートバッグって、そちらが管理されてる感じですか…? 水玉のやつです…」

「拉致された時に持ってたもの、っすか?」

「はい…。ない、ですかね」

あの中には、スマホや薬が入っているポーチがある。

今、体調はだいぶ安定しているけれどいつ悪化するか分からないし、薬は常に手元に置いておかないと心配だ。

「うちの組、なんか手荒っすよねぇ。ちょっと聞いてみます」

「よろしくお願いします」

真柴さんが部屋を出ていき、私1人だけが残された。

なんだか手持ち無沙汰になってしまい、壁に掛けられた時計を見るとちょうど13時を回ったところだった。

真柴さん曰く、ここは自由に使っていいらしいのだけど……と言っても特にやることはない。

アルバムに入ってる写真を見ようかな、とふと思ったけれど私のスマホはトートバッグの中にある。