でも彼女が私の存在に気が付いた途端、綺麗に上げられたまつ毛がそっと伏せられて怪訝そうに眉を顰められてしまった。

「……誰」

「あっ、え、と……」

答えようとした私に変わって真柴さんが口を開く。

「この子が若が言ってた子っすよ。小桃ちゃん」

まるでよそ者に当てるような眼差しを向けられてしまい、私は後ずさった。

「へぇー、これ(・・)が結が惚れ込んだとかいう?」

これ(・・)……

「ちょっとくるみさん。カンジ悪いっすよ」

「これは失礼しました」

さっきまでの悪態をつくような態度を撤回するかのように今度は深々と頭を下げられた。

「いっ、いえ……」

「あ、小桃ちゃん。この人は若の身の回りの世話をしているくるみさん。多分今後この家に出入りするのは僕とくるみさんぐらいっす」

身の回りの……

ふと気になったことを尋ねてみる。

「あ、もしかしてご飯作ったりも…?」

「あぁ、はい。くるみさんの仕事っす」

やっぱりそうなんだ……っ。

「あの…っ、ハンバーグ……すごく美味しかったです」

「あなたがお食べになったんですね」

「はっ、ごめんなさい……、結くんがやる、って言ってくれたから…つい……」