「あ、いいっす、いいっす。若から聞いてるっすから。小桃ちゃんっすよね」

嫌な感じはなくて。サバサバしてる感じ……。

ずっと前からの友達、かのような接し方はとてもフレンドリーに感じた。

「おい、馴れ馴れしくすんなよ」

「僕だってそれなりに節度のある人間っすよ? 若の奥様になるお方に手なんて出さないっす」

「出したらどうなるか​────」

「あー! 分かってるっすからそれ以上は!」

「あとはこいつから聞け。いいな?」

「は、はい…」

椅子を引いて立ち上がる結くん。

どこかへ行くみたい。お仕事かな?

「小桃」

「は、はい…っ」

部屋を出る前に名前を呼ばれ、反射で返事をすると結くんの表情が僅かに緩んだ。

弧を描くようにふわりと上がった口角。ずっと仏頂面だったお顔に初めて笑顔が宿った瞬間だった。

「愛してる」

「…っ」

それは今までただの1度だって言われたことの無い真っ直ぐでストレートな言葉。本当に私に向けられた言葉なのか戸惑ってしまう。

結くんが出ていく。

2人きりになった室内で、沈黙が出来る中。先に口を開いたのは真柴さんだった。

「アツアツっすねぇ〜」

口の端から覗く八重歯が男の子なのにとても可愛らしくてついじっと見てしまう。