親指の腹で、私の涙を拭ってくれたみたい。

馬乗りしてる癖に、あまりに彼が優しく私に触れるから訳分かんなくなって、もう片目から落ちそうになっていた涙が引っ込む。

ずっと冷淡で何を考えいるのか読めなかった彼の瞳がその時。

一瞬、ほんの一瞬だけど。

揺らいだ気がした。

「……もう喋るな」

さっきよりも随分トゲのない彼の声。

直後鼻を摘まれて、固定された後。

口元にペットボトルを押し付けられた。

「ぁ…がっ……」

中には無色透明の液体が入っているのが見て分かる。

危ない液体だ……。

咄嗟にそう思った。

ゆっくりと傾けられるペットボトル。

抗いたくても身体は言うことを聞いてくれない。

口の中に液体が入ってきた。

「んっ、はぁ……っ、」

仰向けになっているから、液体はなんの抵抗もなく喉を通過して身体の中に入っていく。

眠い……。

今飲まされた液体のせい?

毒だったのかな。

一気に睡魔が襲ってきて。

目、つぶってもいいかな。

水掛けられないかな。

そんな心配をしつつも、重たくなっていくまぶたに抗えず目を閉じた。


あぁ……私…、

誰からも愛されないまま死ぬんだ……

意識を手放す前。

私は、


そんなことを考えていた───────…