お母さん。

ごめんなさい。

せっかく命懸けで私のこと産んでくれたのに。

こんな最期になってしまって、ごめんなさい。

私の身体に入ってるもの。

今から全部どっかに売られちゃうみたい。

嫌だな。怖いな。そう思う傍らもう1つ別のことも考えていた。

「はぁ…はぁ、……しあ……わせに…なって……くれます、か……」

「あ?」

心臓はちょっと調子悪いけど。

他の臓器なら……きっと人様に渡せるくらい健康なはず。

もし困ってるひとに、私の臓器があげられるなら。

その人が幸せになってくれるなら。

それでもいいかもしれない。

こんな私でも誰かの役に立てるなら…それで。

「わたし……の、はぁ……、はぁ…、ぞうき…、だれかが……よろこんで……くれるなら…、あげ、ます………」

誰かが少しでも喜んでくれるなら。

誰かが少しでも長く生きられて、少しでも長く大切な人といられるようになるのなら。

きっとお母さんも、喜んでくれるはず。

全てを言い終えたら、なんだか心の重荷が軽くなった気がして。この2日間恐怖で涙すら出なかったけれど、目尻からスー、と冷たいものが溢れ出た。

直後のこと。

彼の手がこちらへ伸びてきて、かと思ったら目尻にあたたかな感覚が走った。