生まれつきの心臓病。

もって18歳までしか生きられない、とずっと昔に医者から言われている。

そんな女との縁談話なんて、破談になるに決まってる。

「そうですか…、心臓が……。可哀想に…」

心臓病のことを話した途端、さっきまで私に趣味のこととかあれこれ質問してきていた縁談相手とその両親が揃って顔を強ばらせた。

そして、申し訳なさそうな顔で頭を下げられる。

「申し訳ございません。今回の縁談は無かったことに…」

そりゃ、そうなるよね。

‪”‬財閥の令嬢‪”‬って肩書きがあればなんだって優遇されてきたのに、こういう場でその肩書きはちっとも役に立たない。

「ちっ……、ほんとに役に立たんな」

縁談後、広間を出て廊下を歩いていた時のこと。私も内心思っていた言葉を無遠慮に声に出したのは父だった。

腕を組み、縁側にある大きな柱にもたれながら、言葉同様鋭い目つきが飛んでくる。

もうすでに思っていたことだったのに……、どうしてこんなにも父の声が痛々しく私の鼓膜に届いたのだろう。

「…ごめんなさい」

それしか言葉が見つからず、私は逃げるようにその場を去った。

自室に戻って着物の帯を緩める。