小桃が家を出たがるのも何となく分かった気がした。

「何、あの子‪”。‬病気持ち‪”‬なのによく結婚相手なんて見つかったわね〜、ずぶといわ〜」

あの後。
廊下で小桃の義母らしき女性に会った。

俺の顔を見るなりそんなようなことを言っていたが聞き流さないとどうにかなりそうだったので無視した。構うだけ時間の無駄だ、と思った。

そうか。

そりゃこんなんやだよな、小桃……

この家の人間は小桃のことを1人の人間としてすら見ていない。ただの病気持ちとしてしか見ていない。

小桃が今まで負ってきた傷は計り知れない。控えめな性格だ。きっと何も言い返さず「ごめんなさい」とか言って日々をやり過ごしてきたんだろう。

こんなところ今すぐにでも出よう、と思ったが、使用人の1人に俺はそう声を掛けた。

「小桃のお母様に、線香をあげたいのですが」

この家は父親も義母もクズだが、せめて彼女にはちゃんと挨拶しておきたい。

そうして案内された仏間。

広い畳部屋の一角にある仏壇前の座布団に腰を下ろす。