「こちらへどうぞ」
通された部屋。
そこにはおそらく小桃の実の父らしき男性が座っていた。おそらくその認識で間違いないだろう。俺の姿を見るなり「どうぞ」と対面にあるソファを示されたので従った。
「失礼します」
俺が腰を下ろせば、すぐに小桃の父親が口を開いた。
「きみのことは先程使用人から聞いた。小桃と結婚するのか?」
先程、対応された使用人には「結婚の挨拶に」とだけ伝えてあった。
「はい」
「そうか。別に賛成も反対もしないが、……うちの財産目当てか?」
「は?」
「いや。財閥の令嬢、ってだけで群がる下民共はどうしても一定数いるもので」
キッパリとそう言い放ったかと思えば、すぐに考え直したように口を開いた。
「…まぁ、あの子は特殊だから違うか。まぁ、家族の縁などとっくの昔に切れているも同然なのだがら好きにやってくれていい。うちの許可も挨拶もいらない。ではこれで」
娘には一切関心が無さそうな父親。
スっ、とソファから立ち上がり立ち去ろうとする背中に、俺は声をぶつける。
「特殊って、心臓病ってことですか」
怒りでおかしくなりそうなところをどうにか拳を握り締めて耐えた。
「まぁな」
そうして部屋を出ていく父親。特に引き止めることも無くただその背中を睨んだ。
冷たい父親だった。
通された部屋。
そこにはおそらく小桃の実の父らしき男性が座っていた。おそらくその認識で間違いないだろう。俺の姿を見るなり「どうぞ」と対面にあるソファを示されたので従った。
「失礼します」
俺が腰を下ろせば、すぐに小桃の父親が口を開いた。
「きみのことは先程使用人から聞いた。小桃と結婚するのか?」
先程、対応された使用人には「結婚の挨拶に」とだけ伝えてあった。
「はい」
「そうか。別に賛成も反対もしないが、……うちの財産目当てか?」
「は?」
「いや。財閥の令嬢、ってだけで群がる下民共はどうしても一定数いるもので」
キッパリとそう言い放ったかと思えば、すぐに考え直したように口を開いた。
「…まぁ、あの子は特殊だから違うか。まぁ、家族の縁などとっくの昔に切れているも同然なのだがら好きにやってくれていい。うちの許可も挨拶もいらない。ではこれで」
娘には一切関心が無さそうな父親。
スっ、とソファから立ち上がり立ち去ろうとする背中に、俺は声をぶつける。
「特殊って、心臓病ってことですか」
怒りでおかしくなりそうなところをどうにか拳を握り締めて耐えた。
「まぁな」
そうして部屋を出ていく父親。特に引き止めることも無くただその背中を睨んだ。
冷たい父親だった。