【結side】

​────小桃の入院はそれからも1週間。2週間と続き、結婚式を予定している2月2日はもう来週に迫っていた。

小桃の意思は固いようだった。

手術をしない、と決めた理由。

…小桃らしい理由だった。

「はぁ……ダメだな、俺」


その日の午後。
病室の扉を開けると、小桃は起きていた。

「結くん…っ」

慌てた様子でほっぺに手を当てる小桃。目が少し赤く、腫れている。泣いていたのは一目瞭然だった。

きっと俺と昨日あんな話したからだ。

「昨日はごめんな。カッコ悪いとこ見せた」

「そっ、そんな…っ」

「旦那は、妻の気持ちを優先してあげるもんだよな……」

「えっ?」

「俺は小桃の意思を尊重する」

小桃にはずっと生きていて欲しい。

内心そんな気持ちでいっぱいだった。

でも…

小桃が今、望むこと。

俺なりに理解したつもりだった。

きっと小桃は自分の死からもう抗うつもりはないのだろう。

‪”‬最期まで精一杯‪”‬

小桃の話を聞いたら、根底にそれがある気がした。

「結婚式は思い出に残るものにしよう」

今は、目の前にあるものを出来る限り幸せな思い出にしてやりたい。

小桃の病気がこれからどんなふうに悪化していくのか、俺はよく知らない。