「今、心臓移植のドナー待ちしてる人、日本にどれくらいいるか知ってますか…? 沢山いるんです。順番が回ってくるの平均で5年くらい掛かっちゃうんです」

きっと5年の間に私は……

「じゃあ心臓の1つくらい、俺が持ってきてやる。血液型とか小桃と一緒のならいいんだろ?」

「臓器売買は…、脅し文句なんじゃ、なかったでしたっけ?」

「前はそうだった。でも小桃の為なら俺は​────」

「やめてください…」

私の目からも涙が溢れた。

その気持ちだけで十分だった。

「そうじゃなくて…。私の…問題でもあるんです。私の身体じゃ手術に耐えられるか分からないんです」

「やってみなきゃ分かんないだろ? 耐えられるかもしれない」

結くんは…、私の病気のことを知ってからずっと私と一緒に生きる道を探してくれていたんだ、と。この時初めて知った。

今でも不思議に思う。どうしてこんなに素敵な人が私のことを好きになってくれたのだろう。

「でも……」

今まで諦めてた。

‪”‬どうせ長くないんでしょ‪”‬

そうやってどこかで1歩身を引いて、客観的に物事を見ていた気がする。

私の人生のはずなのに、流れていく時間にはいつもどこか置いてきぼりで。何もするにも何を感じようにもどこか他人事。

手術のリスクを説明された時。

正直私は絶望した。

時折思い出したように生きたい、と願うことはあったけどその絶望には打ち勝てない。