最悪殺し​────…なんてことがあっても全然不思議じゃない世界だから。

「なんだ。じゃあ良かった。意地悪されたらすぐ言えよ。俺がなんとかしてやる」

「なっ、なんとか……」

‪”‬なんとか‪”‬の部分がかなり気になるけど、そこは聞かないでおくことにした。

「あ、りがとうございます…」

「なぁ」

「?」

「ちょっと、話してもいいか」

「え? はい…」

急に真面目な顔つきになった結くん。
さっきまでの和やかな空気はスっ、となくなった。ベッド脇の椅子に座り直して、改めて口を開いた。

「ゆい、くん……?」

瞳を揺らして。でも強く意思のある真っ直ぐな眼差しが向けられた。

「結婚してよし、じゃないんだ…。俺はずっと小桃と一緒にいたい」

「…っ、」

視線を落とせば膝に置かれた結くんの手は微かに震えている。それは、初めて聞く結くんの本音。心の深いところにある言葉だと思った。

「頼む…。手術しよう? 移植希望登録、ってのいうのやっときゃいいんだろ? 今からでもやろう?」

調べてくれたんだ…。そういうこと。

結くんの涙が重力のまま、ポタポタと地面に落ちていく。どんな気持ちで調べてくれたんだろう。