病気のこと。

病室で大泣きしたあの日以来、結くんは何も聞いてこない。でも、向き合わない、という訳にはきっといかない。否応でも病気は…、私の身体を蝕んでいくばかりなのだから。

​────その日。

検査結果が出て先生からお話があった。

隣には結くんがいてくれている。

一緒に聞く、と言ってくれたのだ。

「正直、容態はかなり悪いです。いつ心臓が止まってもおかしくない」

「そう、ですか…」

「このまま入院して頂きます」

「…」

先生の言葉は私の胸に重くのしかかるものだった。先生は明確には言わなかったけど、その言葉の前にはきっと‪”‬死ぬまで‪”‬って言葉がつく。

​─死ぬまでこのまま入院して頂きます​─

私にとってそれは絶望と同じ。全ての終わりを意味しているかのような言葉だった。

もう…、結くんと過ごしたあの家には帰れない。

でも、覚悟はしてた。

死への覚悟は出来ているつもり。

でも…今の私にはどうしてもやりたいことがある。死にたくない、理由がある。

「あの、先生…」

私は意を決して尋ねた。

「来月の2月2日…。その日は、外出の許可を頂きたいです」

先生は困ったように手元のパソコンに視線を移す。その表情でなんとなく考えていることは分かってしまうけど、これは譲れない。

「お願いします」