「そういった説明をさせて頂きました所、手術はしない、と。本人がご決断されました」

「小桃が……?」

「はい」

「なんでだよ? そりゃ多少のリスクはあるかもしれないけど手術すりゃ助かるかもしれないんだろ?」

「すみません。理由まではちょっと…」

数年前に心臓移植を断ってた?
しかも自ら?

どういうことだよ…

「このまま手術しなければ、小桃はどうなるんだ」

「…長くはありません」

「は…、なんだよそれ…」

ーー私……もうすぐ死ぬんですよ?

てっきり弱気になってあぁ言ったのかと思っていた。

なのに……

長くはない、ってなんだよ…

小桃の心臓病は俺が思っていた以上に深刻なものだった。医者が言うには病状だってもう随分悪化しているらしい。

俺の前ではいつも普通だったのに。


後日、最近の小桃の様子について真柴に問いただした。

「若には言うな、って言われてたから黙ってましたけど…、前、小桃ちゃんご飯作ってる時に倒れちゃってたんです」

「は?」

「ごめんなさい! 本人貧血、って言ってたからそこまで重症だと思ってなかったんす! まじでごめんなさい! カタをつけさせて下さ​────」

「やめろ。それやると多分小桃が悲しむ」

「若ぁ…っ」

なんだよ…

体調悪かったのかよ…ずっと……。

今まで気付いてやれなかった自分に腹が立った。