……なんで、俺に隠してたんだ、

自覚していたのなら、故意に隠していた、ということだ。

それを聞いた時。
俺は小桃のことが分からなくなった。

でも、小桃の目が覚めて。
病気のことを俺に黙っていた理由を聞いた時。

‪”‬ 普 通 の 女 の 子 で い た か っ た‪ ”‬

その思いを聞いた時。

俺は……

たまらず泣いてしまった。

泣いてるところを見られないように小桃を抱きしめた。

声が震えないように。
弱みを悟られないように。

歯を食いしばって、必死に耐えた。

思い返せばあの時。

ーー心臓は……、この心臓だけは…大切だから…だめ……。やめてください…

それまで意識を失いそうなほど衰弱しているように見えたのに‪”‬心臓‪”‬と言った時だけ強く反応を示した意味も今なら分かる。

酷いことをした。

通ってた高校を変な時期に退学したのも…、そういう理由だったんだな。

まるで口癖のようにごめんなさい、とよく謝るのも俺に後ろめたい気持ちが常にあったのかもしれない。

普通でいよう、普通でいたい、と頑張って気を張っていた所もあるのかもしれない。

ようやくいろんなことが腑に落ちた気がした。

ずっとそのちっさな身体で抱え込んでたんだ。

「結婚式、楽しみだな」

そして俺は、平然を装って笑いかけた。

目が覚めてからも小桃がずっと不安そうに震えてて。泣いてたから。

早く笑って欲しい、とその一心だった。

小桃を好きな気持ちに変わりはない。
たとえ心臓病だとしても。俺は小桃と結婚したい。