「ううん、気持ちだけですげぇ嬉しい。ありがとな」

結くんの目を真っ直ぐ見つめて私は言った。

「では、また別の日にちゃんとお祝いさせて下さい」

薬指についていた指輪はくるみさんに取られたまま。ずっと薬指がすーすーしてすごく寂しかった。

でもその時​────

「楽しみにしてる」

それを知ってか知らずか。

左手を優しく包み込まれるように握られて。

それだけで。

今日1日の怖い思いが、遠いどこかへ吹き飛んでいく気がした。