買った食品は結局行方知れず。きっと拉致された時にどこかへ行ってしまった。私はしばらく検査入院することになってしまったし、料理はしばらく出来ない。

せめて今日の夜ご飯は素敵なものにしよう、って思ってたのに……

「ん? 誕生日?」

「はい…、婚姻届に書いてあるの見て……先月だったんですよね…。ごめんなさい」

「あぁ、……ん? もしかしてそれで真柴と出掛けてたのか?」

「はい……。夜ご飯、いつもより豪華にしたくて…」

「なんだ、そうだったのか。俺の為にありがとな」

「いえ…」

お礼を言われることなんて何も出来ていない自分が不甲斐なかった。

「で、真柴は俺になんか買ってくれたのか?」

結くんが真柴さんに尋ねる。すると真柴さんはギクッ、と肩を跳ね上がらせた。

「それが…財布忘れちゃって……。結局何も…あはは……」

「……」

「ケジメ付けさせて下さい!」

「わー! 真柴さん! 落ち着いて下さい!」

なんでヤクザの人達はすぐこうなるの…っ。

1悶着ありつつも、真柴さんが帰って。そしてまた病室には結くんと2人きりに。

「誕生日…、おめでとうございま……した。上手くお祝い出来なくて、本当にごめんなさい」