落とされたのは、もう味わうことなんて出来ないと諦めかけていたキスだった。

以前となにも変わらない様子で結くんは言う。

「結婚式、楽しみだな」

「…っ」

瞬間、時が止まったみたいな感覚に陥った。

今……なんて…

「どういう……意味ですか」

「どういうって…、そのままだけど……」

「離れて…行かないんですか?」

「離れて行かない」

「なんで……っ、私で…、いいんですか…?」

「あぁ」

「きっとすごく…っ、大変ですよ……?? すぐ悲しませちゃいます……っ、世界、輝かなくなっちゃうかもしれません…っ」

「小桃が俺の事好きになってくれて。もう十分輝いてる」

何を言っても結くんは、私の不安を跳ね除けてしまう。

「私……もうすぐ死ぬんですよ?」

「そういうこと言うな。俺がいいって言ってんだからいいんだよ。俺に口答えすんのか?」

「ううっ、ぐすんっ、しません…っ」

いつまでも止まらない私の涙を結くんがそっと、拭ってくれる。




この日。

私は結くんに全てを知られてしまった。

でも、私が思うような結末にはならなくて。


「小桃。愛してる」

今までと何1つ変わらない笑顔を向けてくれた。