「婚約は…破棄してもらって構いません。金輪際、結くんには近付きません。今ここで殺してもらって構いません。気が済むまで拷問してもらって構いません。ごめんなさい…。ごめんさい………っ」

おかえりなさいも行ってらっしゃいませも。

毎日のように言う人がいるなんて。涙が出るほど嬉しかったんです。舞い上がってたんです。

「…っ、ごめんなさい……ごめんなさい…っ、ごめんさ……ごめんなさ…っ」

ほら。

だから、言わんこっちゃない。

こうやって欲張りになるから…、恋なんてしたくなかったんだ。

そうして散々謝罪の言葉を吐いた後のこと。ふいに本音が…滑り落ちてしまった。

「……うぅーーー…っ、ゆいくんと…っ、…っ、結婚っ、したかったっ…」

きっともうしてもらえない。

私が1番分かってる……

こんな女と結婚する意味がない、って。

結ばれた所ですぐ…、悲しませるだけ。

「ゆいくんと同じ苗字になりたかったっ…」

それでも願ってしまう。

夢見てしまう。

「健康じゃなくて…っ、ごめんなさい。……ふつうの女の子じゃなくてごめんなさい…っ」

どれだけ謝っても謝り足りない。