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「…っ」

真っ白な天井。
ピッピッ、という規則正しい機械音。

目が覚めたら病院にいた。

「小桃……、分かるか」

少し視線を動かすと結くんの姿が視界に飛び込んで目に涙が溢れた。

「ゆ、ぃ……くん…」

蚊の鳴くような声が喉から漏れる。

生きてること。結くんがそばにいること。
他にも色々。ストン、と心が軽くなる。

でも、それはほんの一瞬のことだった。

「ぐすんっ、ごめんなさい…、ゆいくんっ…、ごめんなさい……」

口元に装着された酸素マスクが曇る。

聞かれる前に。私から話さなきゃいけない。

意識を失っている間に、色々検査して。きっと心臓病の事も判明してるはず。結くんがここにいてくれること。それは、私の病状についての説明もきっとお医者さんから受けているってことだと思う。

「……なんで黙ってた」

眉を下げて、ただじっと私を見つめている結くん。きっと怒ってる……。

「その…心臓のこと」

「……ごめんなさい…」

ーー申し訳ございません。今回の縁談は無かったことに…

ーー‪”‬あれ‪”‬じゃまともな跡取りなんて産めないだろう

言ったら、全て終わりだと思った。

結くんが離れて行くと思った。

この幸せがなくなってしまうと思った。

今までずっとそうだったから。