そしてまたもや無理やり席に座らせた。
「あ、あのー帰してくれ…」
帰してくれ、と言おうとした瞬間男の人はメニュー表を差し出した。…え？メニュー表？不思議に思った私は男の人と目を合わせた。言いたいことを読み取ったように男の人は
「口止め料」
と言った。あ〜なるほど、口止め料か。…ふふ、確かにあの冷血王子があんな可愛い姿があるなんて広まったら大変だもんね。
「おい、何笑ってんだよ」
笑っていることがバレたのか、不満そうに顔をしかめながら言った。…でもあの姿見ちゃったからちょっと可愛く思えてしまう…。あーだめだ、失礼だぞ朱里〜っ！私は自分の顔から必死で笑顔を消し、男の人に言った。
「口止め料、いりません。ちゃんと約束守ります。もう帰っても良いですか？」
「ダメだ、信用出来ないだろ。それに外はもう暗いからここにいろ」
えー。いいって言ってるのに。この人案外強引なのか。
「遠慮なんて良いから好きなの頼め」
…なんかこれ以上抵抗してもいいように流される気がする。そう思った私はありがたく頂くことにした。
「…決まったか？」
…このいちごパフェにしようかな。
「あ、じゃあこのいちごパフェを…」
「ん」
そう言って店員さんに注文した。
「いちごパフェ2つください」
…え！？私ふたつも食べないよ！？…て、あれ、もしかしてこの人も食べるってこと！？私の気持ちを察したのか顔を曇らして「悪いかよ」と不機嫌そうに呟いた。
「あ、いや、全然いいと思います」
「あっそ」
え、ちょっと待って会話が続かない…。なんか話題を…。1人で話題を考えてると、向こうから口を開いた。
「…お前、名前は？」
あれ、そういえば名前言ってなかったか。
「秋山朱里です」
「…」
え、何も言ってくれないんですか。私はこの空気感が嫌だったので、私も名前を聞くことにした。
「じゃあ、あなたの名前は…？」
「え？俺の名前知らないの？」
…紹介された事ないし知ってるわけないじゃん。
「ふーん。暁(あかつき)小澄(こずみ)」
小澄君っていうんだ。これは千紗に言わなきゃな。名前を知ったからかほんのすこーしだけ親近感がわいた気がする。…気がするだけだけど。そう思っていると店員さんが2つのパフェを運んできた。…うー、来た〜！
「いちごパフェでございます」
期間限定だからレアだ〜！いちごパフェに目を輝かせながらスマホをとり、写真を撮った。暁くんはと言うと…。
カシャッカシャッカシャッ。
ってめっちゃ写真撮ってるじゃん！！…私にはバレたからもう良いのかな。