-私の高校には、運動万能、成績学年トップ、みんなが魅了されるカリスマの3つを持つ最強王子様がいるらしい。そして今、私の前で彼について一生懸命話しているのは、中学の時から友達の真中千紗(ちさ)。サラサラのロングヘアで小顔で超絶可愛い系の彼女は男子からの人気が多い。私がこの子の友達で良いのかなっていつも思ってしまうけど、それを言うと彼女が怒ってしまうから心の中にいつもしまっている。私もこんなに可愛いかったらなぁ…。

「朱里(あかり)っ、ちょっと聞いてる!?」
「あー、うん。聞いてる聞いてる」

正直王子様についてはあまり興味は無い。恋愛はしたいなと思ってるけど、1年間付き合っていた彼氏とも最近別れちゃったししばらくは良いかな…。
「あんたってほんっと王子様のこと興味無いよね」
「興味無い人なんて他にもいるでしょ?」
「いや、あんただけだと思うよ…。あ、そういえば朱里会ったことないでしょ!1回あったら虜になっちゃうって!」
そうかなぁ。まぁ、でも噂ではすごいカリスマを持ってるって聞いたしすごいのかなぁ。
「あ、じゃあさ、放課後クラス覗いてみない?」
「っえ!クラスに?絶対嫌。」
その王子様とやらは高校三で私達は高二だから1つ年上らしい。そして彼のクラスは4組。でも私が行きたくない理由はそこではなく、いつも放課後の4組は、王子様の顔を見ようと人が溢れかえっているのだ。…あんなとこ、絶対嫌っ!

「ねー、行こうよー」
「ひとりで行ってきなよ〜」
「え、1人で?やだよ〜、先輩達のクラスの廊下ひとりで歩くなんて生きて帰れないよ〜」
…確かに。私もひとりで3年の廊下歩くのは無理だな。
「ね、お願いっ!この通り!!」
千紗が頭を下げておねだりしてきた。んー、どうしようかな。まぁ、用事もないしいっか。
「分かったよ。私はついて行くだけだからね?」
「わーい!ありがとう!我が親友、大好きっ!」
そう言って千紗が飛びついてきた。もう、いつもこうなんだから…。でも私はそういう千紗が可愛くていつも許しちゃうんだけどね…。
最後の授業が終わり、あっという間に放課後になった。
「さぁ、朱里さん、行こう!」
急にさん付けになったことにおかしく思いながら千紗の後について行った。
3年生の教室は4階にあって、私たちの教室は2階だから少し遠い。階段をのぼり終えると、3年の先輩達が沢山いる廊下に着いた。私なここが苦手なんだよねぇ。だってほら、めっちゃ先輩達私たちのこと見てるじゃんっ!怖っ!!
「ね、ねぇ、早く行こうよ千紗」
「え?何で?」
「な、何でじゃないでしょ、先輩達がこっち見てて怖いよぅ」
「だーいじょうぶだよ、みんな可愛いっ、あの子っ!って言って見てるだけだからー」
あ、そういう事か、千紗は可愛いもんね。なら平気か。
「待って、朱里勘違いしてない?」
「勘違い?」
「うん、さっきの先輩達が見てるってやつ私じゃなくて朱里だよ?」
ん?私?それってどういうこと?
「え、待ってそれって…?」
「あー、出たー、朱里の鈍感。」
…?意味がわからない発言を言いながらスタスタ歩く千紗において行かれないように着いて行った。
「ねえ、千紗、さっきのって…」
『キャーっ!!』
私が質問しようとした瞬間、向こうの方で悲鳴が上がった。というか、さっきのは歓声?それに気づいた千紗は歓声が聞こえた方へ走って行った。
「ちょっと千紗どうしたの?置いていかないでよー」
私も千紗を追って歓声のした方へ走った。