お風呂に入って、同じ部屋の女の子たちでトランプを始めた。

 トランプを持ってきたのは真凛。それが他の部屋の子たちにも広まって、何人か遊びに来た。

 大富豪でボロ負けして、わたしは輪から離れた。

 こういうゲームも、わたしにはどうも向いてないんだよなぁ……。

 喉が渇いたから、小銭入れを握りしめて、ジュースを買いに行くことにした。

 女の子たちは大盛りあがりで、わたしが部屋を出たことも気付いていないみたいだった。



「自販機……どこだっけ?」



 大浴場に行く途中で見た気がするんだけど、探せど探せど見つからなかった。

 そのうちに、中庭のようなところに出てしまって。

 案外、こういうところにあるのかもしれない、とそこへ出ようとした時だった。

 ……誰かいる!



「ごめんね。君とは付き合えない」



 わたしはとっさに扉のかげに身を隠した。

 これは、早月くんの声だ。

 一緒にいるのは、確か二組の女の子だったかな?



「そっかぁ。早月くん、理由聞かせてもらってもいい?」



 これは、確実に。早月くんが告白されて、それを断った場面だ。

 早く逃げた方がいい、という気持ちと。

 そこから先を聞きたい、という気持ちと。

 それらがせめぎ合った結果、結局身動きできずに立ち聞きする形になってしまった。



「理由かぁ。うん……実はさ。俺、好きな人いるんだよね」

「そうなんだ。それなら仕方ないね。これからも、友達でいてくれる?」

「うん。友達ならいいよ」



 二人はわたしがいる方と反対方向に去っていった。

 すっかり見えなくなってから、わたしはその場にしゃがみこんだ。



「う、うわぁぁぁ……」



 衝撃の場面を目撃してしまった。

 まだ、入学して一ヶ月経っていない。

 それなのに、もう告白する女子がいるだなんて。

 そして、それ以上にびっくりしたのが。



「好きな人いるんだよね」



 早月くんのこの言葉。

 これは、本当のコト?

 それとも、断るための言い訳?

 ぐるぐる考えたまま、わたしは部屋に戻ってきてしまった。

 真凛がわたしを見て言った。



「美奈! どこ行ってたのー?」

「自販機……その、喉渇いて」

「でも手ぶらじゃない」

「場所、わかんなくて」

「もう、あたしが一緒に行ってあげる!」



 真凛の後をついて、ロビーまで行った。

 大浴場の方にあると思っていたのは、勘違いだったみたいだ。



「美奈、どうしたの? なんかあった?」

「えっ、何もないよ?」

「本当かなぁ? まあ、何かお悩みがあったら、いつでもこの真凛さんに言いなさい。ねっ?」

「ごめんね……」



 その夜は、なかなか眠れなかった。