入学式が明日に迫った。

 今日は念願のスマホ契約の日。

 早月くんも一緒だ。



「わたし、この機種にしようってずっと決めてたんだ」



 店頭で手に取ったのは、淡いピンク色のスマホだった。早月くんが言った。



「へぇ……俺、機種にはこだわりないし、これの色違いにしようかな」



 早月くんは、青色のスマホにした。

 わたしはお母さん、早月くんはお父さんがスマホの契約をして、説明も聞いて。

 お昼ごはんをファミレスで食べて、帰ってきた。

 リビングで、お母さんがわたしと早月くんに言った。



「いい、二人とも。スマホを使うルールはきちんと決めるからね」



 お母さんは色んな条件を出してきた。

 実際に会う友達以外の人とは連絡先を交換しないこと。

 新しいアプリを入れる時はお父さんとお母さんに相談してから。

 夜の九時になったらリビングの充電器に繋いで、そこからは朝まで使うのは禁止。

 その他、色々、色々……。

 正直うっとうしいけど、まだ中学生だもんね。お母さんが心配するのも無理ないか。

 お父さんとお母さんの連絡先を登録して、次は早月くん。



「まあ、毎日会うし、連絡することもそんなにないと思うけどなぁ」

「そうだね」



 早月くんは、試しにネコのスタンプを送ってくれた。

 わたしも送り返した。

 わたしのスマホでの初めてのやり取りが、早月くんとになっちゃった。

 それから、早月くんはこんなことを言った。



「カメラ使ってみたいなぁ。美奈ちゃん、一緒に撮ろう?」

「一緒に? い、いいけど……」



 早月くんは、自分のスマホの設定をインカメラにして、手を伸ばした。

 もっと近づかないと、画面に入らない……。

 触れるか触れないかの微妙な距離で。

 わたしたちはツーショットを撮った。



「ふふっ、美奈ちゃんは写真でも可愛いなぁ」

「もう、そんなことないってば」



 ここ数日、早月くんと一緒に暮らしているけれど。

 早月くんは、何というか、わたしを買いかぶりすぎだ。

 いとこのひいき目っていうやつなのかな……?

 わたし、別に可愛くも何ともないのに。

 撮った写真も、すっごく微妙な表情。

 けど、早月くんは嫌味のない爽やかな笑顔だ。

 本人を直接見るのは、恥ずかしいからできないけど、写真の中の早月くんをまじまじと見てみる。

 本当にわたしたち、血が繋がってるの? と不思議になるくらい、似ていない。

 明日からは中学生。

 わたし、上手くできるのかな……?