文化祭が終わると、大きな波が引いてしまったように学校は静かになった。

 つまらないけど、頑張らなくちゃいけない授業を眠い目をこすりながら受ける。

 わたしはまだ、早月くんみたいに、大学とか、仕事とか、決めたわけじゃないけど。

 将来の可能性を潰さないためには、勉強はやっておかなくちゃね。

 お昼休みはいつも通り真凛と一緒。真凛はふわぁとあくびをして、こんなことを話した。



「なんかさ、早月くん周りの新しい情報なくてつまんないや」

「えっ、どういうこと?」

「早月くんがあまりにもそっけないから、女子みんな諦めモードって感じ。誰かのことが好きなんじゃないかっていう噂もあるけど、基本的に男子としか話してないみたいでさ」

「ふぅん……そっか……」



 わたしといとこ同士、っていう噂は流れてなくてよかった。

 学校だと、本当に話さないもんね、わたしたち。



「あっ、でもね、美奈、西条先輩と江東先輩の噂はある!」

「そうなの?」

「二人だけで下校しているのを見た子がいるんだって! ひょっとすると、ひょっとするかもよ?」



 正直、気になるけれど、わたしはあの二人の事情を知りすぎている。

 ボロが出たらいけないから、興味のないフリをした。

 家に帰ると、早月くんは相変わらずだったけど、一つだけ変わったことがあった。



「美奈ちゃん、俺、ブラックコーヒー飲めるようになった!」

「わっ、凄いね!」

「叔母さんには、カフェインあんまり子供によくないから、飲みすぎんように言われてしもたけど。俺かてもう中学生なんやけどなぁ」

「ふふっ、お母さんにとっては、まだ中学生、だからね」



 夕飯の時、話はクリスマスのことになった。

 お父さんが言った。



「結局、お父さんもお母さんも仕事だよ。どこにも連れて行ってやれなくてごめんな」



 わたしは言った。



「いいよ、気にしないで」

「せやで、叔父さん。こうして毎晩ご飯食べさせてもろてるだけで俺は嬉しいですから」



 そっか、クリスマスか。去年はコンサートに行って、ディナーを食べたっけ。

 今年はどうやって過ごそうかなぁ……。

 家族で過ごすイベントなんだから、早月くんと、っていうのは別におかしくない気がするけれど。

 もし、早月くんが誰か好きな人と過ごしたいと願うんだったら。

 それを優先させてあげたいと思った。

 そんな話をした翌日。登校すると、真凛がわたしを見て駆け寄ってきた。



「美奈、大ニュース! 西条先輩と江東先輩、付き合ったんだって!」

「えー!」


 あの二人に、一体何が?