早月くんに手伝ってもらって、体育祭のプログラム作りが期限内にできた。

 そして、クラスでどの種目に出るのか決めなくちゃいけなかったんだけど、わたしは玉入れにした。

 必ず一つは種目に参加しなくちゃいけないんだって。だったら、一番楽そうなのにしちゃった。

 体育の授業は、一組と二組合同でしているんだけど、それで早月くんがリレーに出ることがわかった。

 そして、いつもの真凛情報。



「早月くん、アンカーなんだって! さすがだねぇ」

「そっかぁ、凄いね」



 バトンパスの練習をする早月くん。女の子たちが自分の練習そっちのけで注目していた。

 運動するのは好きじゃないから、体育祭もそこまで楽しみじゃなかったんだけど……。
 
 早月くんの走る姿を見ることができるのはいいな、なんて。わたしって単純。

 体育祭当日は、からっと晴れて、気持ちのいい風が吹いていた。



「はぁ、はぁ……」



 玉入れはボロ負け。わたしなりに、頑張ったんだけど。

 水をごくごく飲んで一休み。

 自分の待機場所に戻って、自分が作ったプログラムを見た。

 一年生男子のリレーはもう少し後だ。

 わたしの隣にいた真凛が言った。



「ねぇ美奈、リレーの場所取りしよ! ゴールの瞬間見たくない?」

「えっ、今から?」

「遅れたら大変! 早月くんを見たい人は沢山いるんだから、早く行かなきゃ!」



 そして、ゴール地点がよく見えるところまで移動した。

 日差しが……キツい。

 手でパタパタと顔をあおいでひたすら待った。

 なんとか耐えて、ついに早月くんの登場だ。

 いつの間にか、周りにはわんさか女の子たちがいて、大きな声を出していた。



「早月くーん! 頑張れー!」



 早月くんは、屈伸をして、鋭い目付きでゴールテープの方を見ていた。

 まるで、周囲のことなんてまるで見えてない、聞こえてないみたい。

 ピストルが鳴り、第一走者が走り出した。アンカー、早月くんは四番目だ。

 本当は、自分のクラスの一組を応援するべきだろうけど、わたしの目は二組の子に釘付けだった。

 けっこう、遅れてる……。

 早月くんがバトンを受け取ったのは、最後だった。

 でも。

 そこからが凄かった。



「わぁっ……!」



 早月くんが、ぐんぐん抜いていく。一人、二人、三人。とうとうトップ!



「やったな早月!」



 リレーのメンバーの男の子たちが、早月くんを取り囲んで、肩や背中を叩いていた。

 わたしも、何か声をかけたくなったけど、ぐっと我慢した。