連休明け、生徒会の日。

 真凛と一緒に生徒会室に行った。

 二年生の先輩たちは勢ぞろいしていて、それぞれ椅子に座っていた。

 わたしたちが入ってきたのを見て、西条先輩が立ち上がった。



「待ってたよ、高野瀬さん、鈴木さん。相談したいことがあってね」



 一体なんだろう。わたしと真凛は西条先輩の近くに行った。



「新学期が始まって一ヶ月が過ぎたけど、生徒会の一年生が高野瀬さんと鈴木さんだけなんだ。もう少し、人を増やしたいんだよ」



 西条先輩によると、生徒会には三役と呼ばれる役職があって、生徒会長、副会長、書記を指すらしい。

 その三人が最低でも揃っていないと運営が難しいらしくて、一年生が二人しかいないという状況はまずいのだとか。



「だから、まだ部活に入っていない一年生の子がいたら、声をかけてほしいんだ」



 すると、真凛がポンと手を叩いた。



「あたし、心当たりあります! 誘ってみますね!」



 わたしはびっくりして真凛に尋ねた。



「えっ、心当たりって、誰?」

「ほら、鈴木早月くん! 帰宅部だっていうのは有名な話だよ?」



 ここからは、真凛情報。

 早月くんは、体育の授業で大活躍して、それで運動部の勧誘が激しかったみたいだけど、全部断ったらしい。

 文化部も名乗りを挙げたようだけど、どこにも入る気はないという一点張り。

 休み時間は、もっぱら読書をして静かに過ごしているのだとか。



「早月くんが入ってくれたら最強になると思わない?」

「でも……何かの活動をすること自体を嫌がってるっぽいよ? ダメだと思うけどなぁ」

「誘ってみないとわからないよ! 明日、早月くんのところに行ってみよう!」



 そして、翌日の昼休み。本を読んでいる早月くんのところに、真凛と二人で近づいた。



「あのう、鈴木早月くん」

「ああ……高野瀬さんだっけ。何か用?」

「実はね……」



 真凛が今の生徒会の現状を説明した。わたしは真凛の後ろで黙って早月くんの表情を伺うばかりだ。

 真剣な顔つきで、全てを聞き終わった早月くんは、ふんわりと笑って言った。



「いいよ。俺、入るよ」

「やった! ありがとう!」



 まさか、本当に入ってくれるだなんて思わなかったから、わたしはびっくり。

 家に帰ってから、早月くんに聞いてみた。



「ねえ、本当によかったの、生徒会。無理してない?」

「無理してへんで。美奈ちゃんと過ごせる時間が増えるから嬉しいわぁ!」



 一瞬、その言葉にドキッとしてしまったけど、早月くんは優しいから、気を遣ってそんなことを言ったのだと思い直した。



「もう……いとこだってことは内緒なんだからね?」

「わかっとう、わかっとう」



 どの部活にも入らなかった早月くんが、生徒会に入った。

 そのことは、校内で一気に話が広まって、次の生徒会長は早月くんではないかと囁かれるまでになってしまった。