あの連中なら必ずやらかすと思って荷物検査を始めて良かった。前の時と一緒だ。校則違反の問題児共が!!

「会長、先ほどの編入生達は帰ったようです」

「なに?初日から休むってこと?」

「そのようです」

「風魔法で衣服を乾かせばいいものを」

「……そういった事は頭にないようでした」

「アホかな?」

「会長……」

「まあ、いいよ。問題を起こして困るのは彼らなんだ。学園に留年制度がない事も知らないんじゃないかな?」

「まさか!」

「まあ、退学処分されるまでの我慢だと思っておこう」

「退学になると考えているんですね」

「あの態度だからね。十分あり得る事だよ」

 今思えば、前はよく退学にならなかったものだ。連中、出席日数も足りてなかった筈なのに。いや、学園には一応登校していたか。授業には出なかったけど。まあ、王太子が率先して校則違反を繰り返していたんだ。注意する人間なんていなかった。教師も彼らを指導する気はなかったようだから仕方ない。

「それにしても強烈でしたね」

「事前に説明されていた筈だが、あそこまで規則無視は珍しい。彼らは特別なんだろう。前年に差別意識の高い教員が辞めてくれて助かった。損得勘定を優先して編入生達を贔屓していただろうからね」

「え? アレは会長が辞めさせたんじゃ……」

「爵位によって擦り寄って来る教師なんて不要だよね」

「そ、そうですね」

 見て見ぬふりしてた連中だ。僕としても何も間違った事をしたわけじゃない。彼らがまともに生徒を導いていたなら何もしなかった。忖度が仇になるとは考えなかった連中が悪い。それに自主的に辞めさせてあげたんだ。クビにされるよりよっぽどマシだろう。


 しかし、今回の件に関しては大公女に感謝したいよ。あの男達を蹴り倒す権利を与えてくれたんだからね。足腰鍛えていて良かった。剣士を自称するジョバンニの野郎は上半身から上はめっぽう強い。けど、下は全然だ。無防備にも程がある。まあ、騎士団を目指してたからそれも当然だろう。暴力的行動には全身全霊を持って使いこなさないと意味がない。魔力を足に集中させたから暫くは起き上がれないだろう。いい気味だ。上機嫌の僕は気付かなかった。他の生徒会役員たちが僕を恐怖の眼差しで見ていることに。そして、そんな僕との会話で更に怖れていることに。