「まあまあ、そんなに怒らないでヨハン。ジョバンニも反省している事だし」

「ルーチェ様!」

「ね、反省しているわよね。ジョバンニ」

「も、もちろんです!!」

 にっこり微笑んで言えば喜々とするジョバンニは単純だわ。
 元は良いのに残念な男よね。それとも騎士団に入る事を目指してたから脳まで筋肉で出来ているのかしら?
 ま、こっちはそれで助かっているけど。

 私が庇ったせいか、ジョバンニはヨハンに対して優越感むき出しの視線を送っているし……うざったいことこの上ないわ。エンリケ王子とは別のベクトルで面倒な男なのよね。私の護衛ではあるけど侯爵家の嫡男という立場のせいか御機嫌を取らないといけない。何処の世界に従者の機嫌を取る主人が居るって言うのよ!あ、ココにいたか。はぁ~~。お父様の命令だから逆らえないのよね。


『いいか、ルーチェ。ジョバンニはお前の護衛だがその前にカストロ侯爵子息だ。侯爵自身が未だに国王に忠誠を誓っている事もあり立場的に従僕として扱う訳にはいかない。そんなことをすれば大公家は良い笑いものだ。お前もジョバンニに気に入られ続けろ。彼はお前に恩を感じているんだ。今以上にこちらに引き込んでおけ。そうすれば、いずれ侯爵もこちら側にくる。なに、あの侯爵はなんだかんだ言っても息子に甘い男だ』

『……分かりましたわ。お父様』
 

 お父様に呼び出されて言われた言葉がこれだった。
 私は笑顔を張り付けながらも、内心は不満だらけだったわ。だって、護衛なのに護衛じゃないんだもの。そりゃ~態度にも出るってもんでしょ。意味が分からないにも程があるわ。
 だけどこればかりは仕方がない。貴族の世界にルールがあるように平民には理解できないルールが存在するのだもの。それにこれは私が大公令嬢として上手く立ち回る為でもある。まあ、王妃になれば()()を愛人として遇すれば良い事だもの。


 そう言えば、ミゲル・ぺーゼロット公爵子息は生徒会長って話だったわね。悪くないわ。彼も私の愛人候補にしてあげる。

 泣いて喜ぶわよ、きっと――