二年後――



 学園長から数名の編入生が来月から来ると報告があった。

 一応、生徒会長として『編入生たち』の資料を確認する。
 編入生の数は四名。
 
 エンリケ第一王子。
 
 嘗ての側近の二人。
 近衛騎士団団長を父に持つ、ジョヴァンニ・カストロ。
 神官長の息子のヨハン・フィーデス。

 
 そして――

 
 ルーチェ・グラバー大公女。

 最初の男三名はいい。
 問題はこの女だ。

 資料に添えられている写真からグラバー大公女はあの女にそっくりだった。
 前回、義姉上を陥れた平民出身の聖女。
 他人の空似にしてはに過ぎている。その上、名前も同じ「ルーチェ」である。


「何が起こっているんだ?」

 僕のつぶやきに答えられる者は誰もいない。

「会長?」

 独り言を怪訝に思われたのか会計が声をかけてくる。

「大公家の御令嬢に関してもう少し詳しく知りたい。何かないか?」

「それならば近衛騎士が知っているかもしれません」

「近衛が?」

「はい。騎士団の団長の御子息が大公家の御令嬢の護衛として数年前からついているそうですから」

「それは編入してくるジョヴァンニ殿のことだろうか?」

「はい」

「だが、彼は仮にも侯爵家の跡取りのはず……護衛をするには年齢が合わないのでは?いや、それ以前に王家に対して忠誠を尽くす近衛騎士団団長の息子が大公家の護衛?第一王子なら兎も角、よく父君が許したな」

「……」

「何かあるのか?」

「僕の家はカストロ侯爵家の寄り子貴族の一つです。詳しい事は分かりませんが、数年前に長男であるジョヴァンニ様は侯爵家と絶縁関係にあるそうです」

「はぁ?! ぜ、絶縁!!?」

「はい……」

 驚いた。
 跡取り息子を絶縁するってなんだ!!?
 前の時だって脳筋の長男を何だかんだで最後まで見捨てる事を渋った親だぞ?

 一体何があった!?


「その……ジョヴァンニ様は何でも冤罪を被せられていたらしく……そのせいで侯爵家とは疎遠に……」

 冤罪?
 する方ではなくされた方だと!?

「も、もちろん、冤罪事件は既に解決されています!ただ、そのせいで侯爵家との和解まではいかなかったらしくて」

「それで何でまた大公家に?」

「ジョヴァンニ様の冤罪を晴らしてくれた人物というのが大公家の御令嬢、ルーチェ様だからだそうです」

「えっ?」

 は? はああああっ!?!?
 な、なんだと~~~っ!!!