今日という日は僕にとって、いや、ぺーゼロット公爵家にとっても特別の日。
 僕のお披露目会という名目のガーデンパーティーだ。そのせいか、大勢の子供達が集まっている。高位貴族だけじゃない。下位貴族の子供達も多い。前は気が付かなかったけれど、これは殆ど顔見せに近い状況だ。

 


 パシャ!!

 周りを見渡しながら歩いていると横から飲み物が飛んで来た。手も服もびしょ濡れになってしまった。それだけじゃない。顔にも少しかかった。うん、ベリー系のジュースだ。そういえば前もそうだったなぁと思い出した。前回の時も僕にジュースをひっかけてきた子がいたのだ。あの子は確か……う~~ん。何て名前だっけ?忘れたけど男の子だったな。

「あっ、ごめんなさーい」

 ワザとらしく謝る声が聞こえ、僕は声のする方向に視線を向けた。そこには同年代位の男の子達三人の姿があった。真ん中にいる子が手にグラスを持っている事から先程僕の方に投げつけて来たのはこの子だと解った。
 僕は内心溜め息をつく。
 前回は緊張していてパニックに陥った僕は泣いて何も言い返す事ができなかった。義姉上が気付いて彼らを親共々パーティー会場から追い出してくれたんだっけ。ああ、思えばそれがそもそもの間違いだったんだ。あの時、義姉上に頼るんじゃなくて僕自身がそう対応しなければならなかった。それが出来なかったばかりに僕は他の貴族から舐められた。その結果、学園での発言力にまで影響したのは否めない。

 過去は繰り返さない!!

「わざとやったんでしょう?」

 僕は静かに口を開いた。

「なっ!!?」

 なんでそんなに驚くんだ?
 どう考えてもわざわざ喧嘩を吹っ掛けてたとしか思えない状況だと言うのに。それとも何か?これで話す切っ掛けになれれば友情が芽生えるとでも思っているのだろうか?それこそあり得ないだろう。
 どっちかと言うと、上位者を下僕にして駒にしてやろうという腹積もりだと言われた方が納得する。まあ、こんな公の場で行うアホどもだからそこまで頭がまわらなかったのかもしれない。

「誰か、この三人の親を連れてきて」

 近くにいたメイドに指示をだすと、急に慌てだす三人組。

「ちょ、ちょっと待てよ!!」

「なんで親が出てくるんだ?」

「おかしいだろ!?」

 この三人は一体何を言っているんだ?

「おかしいのは君達だ」

 僕の言葉を聞いた周囲の者達が次々とざわつき始めた。そして遠巻きに様子を見ていた者達までもこちらに集まってくる。

「子供の不始末は親がとる。当然だろう?」

「ふ、ふざけるな!!」
 
「そうだ!子供同士のケンカに親なんか出すなんて卑怯だぞ!」

 なんだそれは。呆れて言葉も出なかった。こいつは一体どこの国から来たんだよ?お前達はどう見たって僕と大して歳が変わらないだろう。そんなお前達が責任なんて取れない。

「子供の喧嘩?バカかな?貴族階級に属しているとは到底思えない発言だ。それとも公爵家を馬鹿にしているのか?だから簡単に公爵家に喧嘩を吹っ掛けてきたのか?公爵家が本気になればどうなるかくらい解らない訳じゃないだろうに。それとも何?ここで僕に謝罪すれば見逃してくれるとでも思った?そんなわけないだろう」

「くっ…………」

 三人は悔しそうに唇を噛みしめる。
 もしかして本当に何も考えてなかったのか?
 え?
 そんなことがあり得るのだろうか?