医師の見立ては「精神ストレスと過労によるものだと思われる」とのこと。

「暫く安静にしておれば治るかと思われますが、精神的なものですからいつ回復するかは不明です」

「ストレス?過労?」

「はい、それとどうも大人を酷く恐れている傾向にあります。女性は大丈夫なようですが、男性の子爵はあまり近づかないようお願いします」
 
「それはどういう意味かね?」
 
「御子息は大人の男を酷く怖れているように見受けられました。男性の声を聞いただけで恐慌状態となり暴れだす可能性があります。ですから女性の使用人に世話をさせる方が良いでしょう。それと……」

 難そうな顔をする医師の言葉を引き継ぐ形で妻が出てきた。彼女は私より息子の変化に気付いていたようで、それとなく気にしていたようだ。秘かに息子に魔道具を付けさせていたらしい。
 そしてその魔道具は記憶媒体になっており音声をも記録される優れものなのだとか。だから私の知らないところで異変に気付き、それを記録するよう指示をしていたそうだ。全く気が付かなかったぞ。相変わらず有能だな妻は。

「あなた、テネブルの魔力暴走は尋常ではありません。これをご覧になってください!!」

 渡された魔道映像を見て絶句した。
 そこには息子と教師たちのありえない光景が映し出されていた。

 息子に罵声を浴びせ手を上げる姿。
 息子を殴り飛ばし蹴り上げる姿が映し出されている。

「御子息の体には傷は有りませんでした。恐らく回復魔法を掛けられたものと思われます」

 医者の言葉が頭を通り過ぎた。
 それが本当だというのなら、あの教師達は息子を痛めつけた後に回復魔法を施し何事もなかったかのように振る舞っていたことになる。信じられん。
 
「な……なんだこれは!?一体何を考えているんだ!この教師は!? 許せん!」
 
「これはまだ序の口です!!次を見てください!!!これを見てください!!」

 そこにあったのは息子の体をまさぐる教師の姿が映し出されたものだった。服の中へ手を突っ込み体中を弄っているではないか!その顔には歪な笑みを浮かべているではないか!!
 
「あ、あの馬鹿者ども!!こんなことをしていたのか!!奴らは!ふざけおって!!絶対に潰してやる!」
 
「あなた落ち着いて!!これくらいで怒っていては身が持ちませんよ!!それより問題はここからです!」

 はぁ? この後に及んでまだ何かあるのか!?

 一体何があるというんだ!!?