「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 息子の奇声と共に魔力暴走が起こった。
 なんだ!?
 この魔力暴走は!!?

 屋敷全体が揺れている。

 幼い子供の魔力暴走は珍しくない。なにしろ感情そのものを制御できないのだ。だが、これはただの魔力暴走ではない。生命の危機に瀕して爆発したかのようだ!!

「やぁぁぁぁぁ!」

 再び息子の叫ぶ声が聞こえ、同時に魔力が放出されていく。魔力が渦巻いている。こんなことは今まで無かったぞ? 何が起こっているんだ!?

「……ッ」

 私は部屋を飛び出して息子のいる部屋へ向かった。
 確か今は教師との勉学の最中のはずだ!

 バンッ!!!

 勢いよく部屋の扉を開けると、息子は宙に舞い頭を抱えていた。
 魔力が渦巻き、その中心で息子の体は激しく上下している。
 
「な、なんということだ……」

 私が来たことにも気付かない程、息子は我を忘れていた。
 これでは駄目だ。危険すぎる。今すぐにでも止めなければ!
 
「しっかりしなさい!」
 
「うわぁあああん!!」

 私の呼びかけに反応する余裕もないのか、泣きながら何かに必死に耐えている。
 なんてことだ。もう既に自我が崩壊しかけてるじゃないか。いや違う。これが本来あるべき状態なのだ。このままではいけない。早くどうにかしなければ。
 
「ぐぅっ」
 
 息子の魔力量が膨れ上がるにつれ、周囲の空間まで歪み始める。このままでは家自体が壊れてしまうぞ!
 仕方なく私は息子に向けて攻撃魔法を放った。手加減などできる状況ではないから仕方がないのだ。だが息子はそれを軽々とかわす。やはり意識して行動していないせいだろう。生存本能のなせる業か……。
 ならばもっと威力を上げねばなるまい。そう思い更に力を込めて放った事が功を奏した。息子の魔力暴走は停止した。そのまま床に落下する前に浮遊させ受け止める。まだ息はあるが気絶している。どうやら無事のようだ。だが念の為、拘束具をつけておかなければならない。念の為回復魔法をかけておいた。それにしても驚いた。この年齢であれだけの事ができようものなら将来有望な魔術師になれるかもしれない。
 もしかしたら私を越えるほどの実力を持つ者になるかも。
 いや、今はそんな事を考えている場合ではなかったな。
 私は息子を抱き上げ医者を呼ぶように命じた。