まあ正夢使いって言っても何もわかんないだろうから簡単に説明する。

 俺は突然、次の日に自分の身の回りに起こる出来事を夢で見るようになったのだ。
 もちろん、毎日。


 正夢の悪魔?的な何かが言うには、正夢の悪魔と会話ができるようになった人間を『正夢使い』と呼んでいて、正夢使いが夜、夢で見た事は翌日に現実世界でも起こる。

 これは正夢使いになった日に教えてもらった。


 正夢使いになってから2週間ぐらい経って分かったことがある。

 夢の中で見えた未来は多少変えることができるということ。
 でも、最後に見えたワンシーンだけは何があっても変えることができないこと。

 それであの悪魔に聞いてみたら
 たった一つだけ未来を変える方法があるらしい。


 それは、正夢使いが変える未来に応じた“代償”を払うこと。


 そうすれば、人生で三度までなら未来を変えることが出来るらしい。

 俺はそれを使ったことがないからわかんねぇけど。

 まあ、代償なんてわざわざ払いたいようなもんじゃないし、未来を変えなきゃいけない場面なんて起こることないとその頃の俺は思ってた。

 正夢使いになってまだ二週間ちょっと。だけど、未来を変えなきゃいけない出来事を見ちまった。


 同じクラスの女子、朝野咲希が交通事故に遭って死ぬ未来。


 まぁ、クソみたいなヤツに見えるかもだけど、どーでも良い奴のために代償なんて払わねぇ。

 朝野咲希を救いたいと、代償を払ってまで未来を変えたいと願ってしまった理由。それは、俺の初恋を奪い取って、中学二年生から現在に至るまで片思いし続けている相手だから。