バイト帰り、私はいつも通りの道を歩いていた。



いつもよりやけに閑散としている気がする。



それに、いつもと雰囲気が違うような・・・。



ガシャァン──



そんなことを考えている時、路地裏からいつもなら聞こえないような音が聞こえてくる。



なに・・・今、変な音したよね・・・?



いつもと違う雰囲気の中聞こえてきた音を不思議に思い、路地裏の方へと足を進める。



そんなに遠くからじゃないと思うんだけど・・・どこからだろう?



そう思いながら足を進めていると、目の前に倒れている人を見つけた。



「!?大丈夫ですか!?」



「う・・・」



その人に駆け寄り、声をかける。



遠目からじゃ分からなかったけど・・・この男の人すごい怪我してるじゃん・・・!



私の声にうっすら目を開け、うめき声を上げるけど、返答はなし。




なぜ倒れてるのかとか、色々思うところはあるけど・・・今はこの人のことが心配だ。




「えっと・・・救急車・・・!」



救急車を呼ぼう、そう思ってスマホを取りだして電話をかけようとした時、弱々しい力だが腕を掴まれる。



動けるとは思ってなくて、ビクッと肩を震わせながら倒れてる男の人をみる。



その人は、フルフルと首を振っていた。



電話、かけるなってこと・・・?



「・・・電話、かけない方がいいですか?」



私の問いかけに、コクリと頷く。



やっぱりか・・・。



だけど、このまま放っておくことなんてできないし・・・。



「じゃあ、私の家に来てください。手当てただけでもしましょう」



「・・・・・・」



私は両親を亡くしてるから1人暮らしだ。



この人も誰にも気を使わずに休めるはず。



だけど、その言葉になんの反応も示さなかった。



合意と受け取った私はその人の体をなんとか抱えて自宅まで帰った。