真白の背中を追いかけて、後ろからシャツを掴んだ。両手でぎゅーっと握りしめるみたいにシャツがしわくちゃになっちゃうくらいに。

「瑠璃ねーちゃん?」

「真白…、おかえり」

「……。」

背中に呼びかける、会わないうちにすっかり大きくなってしまった背中は頼もしくて。だけど、丸く縮んで心細さを感させる。

だって、不安だよね。

8年振りにここへ戻って来て、どうしたらいいかわからないよね。

「真白…、ここは真白の家だよ」

グッと手に力を入れる。真白の背中に触れそうになる。

「私もお母さんもいる、昔と変わらないよ」

ちっちゃい時から、物心ついた時から、ずっと真白はいた。いつも私のあとをついて、あどけない笑顔を見せていた。

「だから真白もここに帰って来ていいの、ここにいていいの」
 
「…っ」

急に1人になっちゃって寂しかったよね。

置いてかれたみたいで悲しかったよね。


でも真白は1人じゃないよ。


「ここには私がいるから…っ」


泣きたい時は泣けばいい。
我慢しないで、ここは真白の家だから。

「瑠璃ねーちゃん…」

私たち家族だから、それでいいの。

「おかえり、真白…っ」

そっと私の手からシャツが離れて行った。真白が振り返ったから。

俯いていた私の顔に優しく触れた真白の手が上を向かせてくれる。

「なんで瑠璃ねーちゃんが泣いてんの」

見上げると真白は泣いてなくて、大きな口を開けて笑っていた。ぐしゃぐしゃな私の顔を見ながら笑っていた。

「泣き過ぎじゃん」

あまりに楽しそうに笑うからポロポロと私の涙は止まらなくて、これ以上泣いたら変な顔になっちゃうよ。

ぽんぽんと私の頭をなでて、もう泣かないでとなだめて。

なんで私が慰められてるの?

なんで私が泣いてるの?


でも…


真白が笑ってるならいいや。

真白が笑ってくれるなら。


私たちまたお姉ちゃんと弟になれたね。


少し赤い瞳をしていたのは、気付かないフリをしてあげる。

だってそれも家族でしょ?


「ただいま、瑠璃ねーちゃん」