「真白っ」

やっと私の声に気付いた真白が振り返る、だけどハッとした様子で瞳の周りを拭ってこっちを見たから。

「あ、瑠璃ねーちゃんお風呂出たんだ」

「うん…」

私を見る顔は笑ってた、…たぶん。

「暑くない…?」

「風が気持ちいいよ」

「そっか」

「まぁでも普通に部屋の中のが涼しいよね、戻ろっかな」

真白が部屋の中に入っていく、私の横をすり抜けて。
ベランダには灯がないから、顔がよく見えないの。

今本当に笑ってたのかな?

今真白は何を考えてたのかな?


今拭った涙は、見なかったことにしていいのかな…?


“心細かったよね、真白1人で”

“うーん、まぁそれは…それなりに”


お父さんがいなくなったんだ、そんな一言で言えるわけないよね。

なのに私は… 


なんでそんなこともわからなかったんだろう。


“うわー、瑠璃ねーちゃん久しぶり!元気だった!?”

真白は笑ってたけど、本当は悲しいに決まってるし寂しいに決まってるよ。

きっと精一杯笑って見せたんだよ。

私があんなこと考えてる場合じゃない。


どんな思いで真白がここへ来たのかお姉ちゃんの私がもっとちゃんと考えてあげなきゃ…!


「真白…!」


私は真白のお姉ちゃんなんだよ…!!