コンロの下の引き出しからフライパンを出したら、真白がスッと油を取ってくれた。

なるほどね、油引くの忘れるなよってことね。

温めたフライパンに油を流し込む私の隣で真白が今度はじゃがいもに手を伸ばした。ザーッと水で洗ったじゃがいもに包丁をあて、右手の親指でじゃがいもの皮と包丁を押さえながら回して…

「真白そんなこともできるの!?」 

「え?何が?」

「包丁でじゃがいも剝けるんだ!?」

「そう?普通じゃん」

え、普通なの?みんな包丁でじゃがいも剥けるものなの??

私なんてピーラーでさえ剥いたことないけど。

「すごいね、料理してたんだ」

なんか急に大人感じちゃった。
私より年下なのに、この8年間大人になったなぁって…

「料理は俺の仕事だったから」

「え…?」

皮を剥いたじゃがいもをひとくちサイズの大きさに切って水の入ったボウルへ入れた。こんなことも知っている真白は本当にずっとやって来たんだなぁって感じさせる。

「父さん入院長かったから」

お父さん… 
病気でずっと…

「ごめん」

私は何も聞かされてなかった。

聞いたのはもう全てが終わったあとだった。

お父さんがいなくなって、それからのことしか…

「なんで瑠璃ねーちゃんが謝るの?」

くすって笑いながら全部のじゃがいもを切り終えた真白はにんじんを切り始めた。

「私、何にもしてあげられなくて…」

「そんなことない、今してもらってるし」

ひとくちサイズに切ったにんじんを手に持って八重歯を見せて微笑む。

「カレー、作ってもらってるし」

私が真白にできることってなんだろう。

「作ってるの真白だよ」

「あ、確かに!じゃあ全部切り終わったからそこ代わって」

「任されたあめ色玉ねぎも取られるの!?」