苛立ちを抑えながら、それでも強気な姿勢で臨戦する。


「今ですか?」

「はい、急ぎでして。でもここではアレなので――」

「他に誰も居ませんし、ここで手短にお願いします」


私が言葉を遮ると、一旦は困ったように眉をひそめたものの、先生は少しだけ上体を屈めた。


「申し訳ないのですが、今から荷物検査をする必要がありまして。それで、あの……やっぱり僕じゃない方がいいですか?」

「は?」


先生が変に口籠るせいで、余計にイライラする。


「えっ、と……ですね。ほら、バッグの中を見せて貰うわけで」


挙動不審なウェーブヘアを睨み上げようとして、ハッとした。


「本当は内々に済ませたいのですが、女性の先生に頼むべきかと迷ってまして」


完全に墓穴を掘った。私は部屋へ潜入するために、この人にサニタリー用品の存在をチラつかせた。だから私が『丁度良かった』のだろう。


だが、そんな事はこの際どうだっていい。


いま重要なのは、“今から荷物検査が行われる”ということ。タイミング的にも、先生が探そうとしている物は例のタバコだろう。女性の先生がいいと言えば、少しでも時間稼ぎになるだろうか。


……いや、無理だ。既に犯人探しが始まっている以上、いまさら隠しても、“何もなかった”ことにはできない。


「荷物検査は必要ないです」

「え?」

「たぶん、探してる物は私が持ってます」


唐突な自白にポカンと口を開けたままだった先生が、一瞬の間を置いて、真剣な眼差しへと変わる。