次はカンナのバッグ。こっちはできるだけ原型を留めておくために、手探りで中身を確認する。


順番に布の間へ手を挿入していき底まで辿り着いてしまった時、スベスベとした小さな箱に触れた。ゆっくりと引き抜いたそれはやはり、開封済みのタバコだった。


安堵と憂鬱と、苛立ちを抑えるためにフーッと息を吐く。


――――さて、どうしよ?


持って出て、隙を見て処分するか。落ちていたと本人へ返すか。もしくは。


「椎名さーん?」


ノックと同時に聞こえてきた一糸先生の声に、ビクッと身体が跳ねる。


「あっ、はい! 行きます!」


とりあえずタバコを自分のバッグへと押し込むと、私は急いで部屋を出た。


「すみません、お待たせしました」


第一ミッションはクリア。でも、気を抜くにはまだ早い。

カンナのバッグに忍ばせて終わり、なわけがない。相手が次の行動に出る前に処分してしまいたいが、誰かに見られるのも困る。


――何より大事なのは、私が企みに気づいている、と悟らせないこと。


みんなの所へ戻った私は、他愛ない話に笑顔を作りながら、今後の行動を頭で何度もシミュレーションした。




キャンプもどきがお開きになると、生徒達は消灯までの時間を思い思いに過ごす。焦って失敗するのはごめんだけど、彼女達よりも早く動かないと意味がない。


「カンナ、お風呂いつ行く?」


それとなく尋ねながらも、着実に準備を進める。

着替えとポーチ。タバコはタオルの間へ。それを全てトートバッグに詰め込む。