不機嫌さを帯びたカンナの声が割って入った瞬間、視線をぶつけ合っていた私達は、互いに目を丸くした。


「だ、大丈夫、忘れてないよっ」


慌てて取り繕うと、先生が握り拳で口元を隠してクスクス笑う。


ダメだ。気にしたら負けだ。


「じゃあウチだけにさっきの教えて。なんの話してたの?」

「それは秘密」


ピシャリと言い切りながら前へ向き直り、2人より数歩先を行く。


「椎名さん、つれないですねぇ」

「ホントだよねー」


チクチクと攻撃されたところで、この2人に話す気はない。というか、言えない。


私は、この場から彼女達を引き離したかった。理由は単に、今より早いペースで歩きたくなかったから。


先生はクラスの最後尾を拠点とする守備兵であり、彼女達が先生から離れない限り、ずっと一緒に進む羽目になる。どう考えても、一糸先生プラス3人組という最悪なメンツよりは、一糸先生単体のほうがいくらかマシだ。


先生に見られていたのは誤算だったが、こんな身勝手な企みを明かすわけにはいかない。


「芙由のケチ、教えてよ」

「僕も知りたいです」

「…………」


団結した2人に無言の返事を貫くと、話題は自然と次へと移る。

疲れ知らずな2人の会話が途切れたのは、クラスの最後尾として目的地へ到着した後だった。


点呼が終わるとクラス毎にお弁当が配られ、そのまま昼食休憩となる。――が、ここで小さな問題が発生した。