ごく自然に2人が横へ並ぶ。私よりも少し小柄な、160センチほどのカンナを挟んで見る彼らは、バスケ男子らしい背丈が一段と際立った。


「ねーねー、その榎本さんとか椎名さんってヤメない?」


危険地帯へ率先して飛び込んだカンナを、あ然と見つめる。快眠のおかげで、例の女子3人組の存在を忘れてしまったのか。


「それだけどさ、オレは“南くん”で、要は“要くん”なんだよねー」

「マジじゃん! てか、芙由が要くんって呼ぶからだよ」


本音を言えば、この2人と距離が縮まるのは満更でもない。でも、3人組の影がチラついて落ち着かないのも事実。

――だから私は、気にしても仕方ない、なるようにしか成らない、と言い聞かせながら自ら逃げ道を塞ぐ。


「あ……じゃあ、芙由でいいよ?」

「オレも陽平(ヨウヘイ)で」

「ウチはカンナー」


当然の流れで行き着いた視線の先では、『え、俺は最初から要くんだけど?』と要くんが真顔で応えた。


「違うっつの。みんな呼び捨てにしようって話じゃん」

「ねーねー要っ! カンナって言ってみ?」

「カンナ」


堪らず私が吹き出すと、笑いは瞬時に伝染して場の雰囲気が和む。

男子と絡むときは変に勘ぐる必要もなくて、本当にラクだ。


「私達のんびり行くから、陽平と要は構わず行っちゃっていいよ?」

「そう? じゃあ要、行くか。また後でね」

「うんうん! またゴールで会おー」


要くんがコクリと頷いたのを合図に、2人はどんどん周囲を追い越し、遠ざかっていく。


あの2つの背中に害はない。ただ、台風の目になる可能性を秘めている、ってだけ。

……今のところは。