先生の気遣いに便乗して思わぬラッキーを拾ったものの、いざ横になっても、頭から毛布を被ってみても、なかなか寝付けそうになかった。


普通、いち生徒をここまで気にかけるだろうか。相手は担任なので当然といえば当然だけど、でも、カンナの純粋な優しさとは違う気がする。


――先生の気遣いは、素直に受け入れきれない。


考えても時間のムダ。でもすっぱりと割り切れない。気づけば貴重な1時間が終わっていたが、ため息一つで諦めがつくくらいに、私には大きな問題だった。




「ふーゆー!」


救護室を出てすぐにカンナの声が聞こえてきて、ほっと胸を撫で下ろす。

よかった、迷わずに済んだ。……一糸先生も一緒なのは全く嬉しくないけど。


「ねぇ芙由、ウチが描いた絵見る?」

「顔色は悪くないですね。椎名さん、次からは大丈夫そうですか?」

「そだ! もう大丈夫?」


好き勝手に話す2人から顔を逸し、笑いを堪える。


よくよく考えてみると、カンナが一人で救護室へ来られるわけがない。ここは先生に感謝すべきなのだろう。


「先生、授業すみませんでした。次から出ます」


しかと見据えた端整な顔は、微笑みながら頷いた。


「では、僕は養護の先生に挨拶してきますので」

「春先生バイバーイ!」


カンナの大きな腕振りに、先生の軽やかな黒髪がふわりと揺れる。


「春先生がね、芙由の様子を見に行きませんか?って誘ってくれたんだよ」


カンナの密やかな声が妙にくすぐったい。