楓の側で何度も体験してきたから分かる。こういうグイグイ系は、下手したらこちらへ攻撃をしてくるタイプだ。彼らに関心がないなら、必要以上に親しくしないほうが身のため。


「そういえば、南くんと桐谷くんってバスケやってたんでしょ?」

「うん、ジュニアからね。高校でもやる予定だよ」


にこやかに答える南くんと、ただ頷き返す要くん。そんな2人の反応に、心がざわついた。


近隣の中学出身らしいので、“もしかしたら”の可能性を考えずにはいられない。


「試合あるとき教えてね、応援行くよ!」

「マジ? でもオレ達1年だし、すぐは出れないと思うよ?」

「いいじゃん! 行く行く!」


楽しげな彼女達をよそに、席を立つための理由を探す。


彼女達のあからさまな態度に引いているのか、普段は底なしに明るいカンナも、いつの間にか黙って箸を動かしていた。


「あ、訊きたかったんだけど、椎名さんと榎本さんって萩原(●●)と同じ中学だよね?」


――――ああ。


最も回避したかった話題をぶっ込んだ南くんは、きょとんと首を傾げた。


なぜだろう。ふと湧き起こる不安は、避けたい思いが強いときほど現実になる。

こんなとき、“神様はいない”と思うか、“神様は意地悪だ”と思うか。私は前者だ。


――私の大切なモノに、これ以上他人を介入させたくない。それが神様でも。


「南くん達も知ってるほど有名なんだ? 萩原もやるねぇ」


心なしか、カンナの声はいつもより落ち着いていた。


「そうそう! 萩原ってすげーバスケ上手いよな」

「高校もバスケの推薦だったはずだよ」

「ウワサで聞いた! また試合できるの楽しみなんだよなー、なっ要!」