適当な相槌の後で、ビールをもう一口。


晴士が詮索するときは、単にからかいたいだけで、答えに興味があるわけではない。たとえビニール製の女の子を彼女として紹介しても、思う存分笑ってから『イットが良いなら、良いと思うよ』と言うタイプだ。


「ラブの予感はなかったの? おっちゃんからはキレイな子だって聞いたけど?」

「綺麗……まぁ大人びてはいたかもな」


一連の出来事を酒の肴にするのは違う気がして、枝豆をつまむ。


「てっきり野生化して遅くなるかと思ったよ」

「送り狼てきな?」

「そうそう。合コンにも参加しないし?」

「相手は中坊だぞ。犯罪に走るほど飢えてねぇよ」


戯言をモラルでかわすと、晴士は感心したように頷いた。どこまで本気なんだか。


「ところでさ、一糸先生はいつからスタート?」

「2週間とか……3週間?」

「イットにとっては地獄の幕開けだね」


ニヤニヤと楽しそうな晴士を横目に、咥えたタバコへ火を点ける。コイツが茶化しにかかっても乗る気はない。既に、そんな間柄ではない。


「でもさ、お気に入りの生徒とか作ったら、ちょっとは楽しくなるんじゃない?」

「無理。ガキと価値観合わせるだけでも一苦労なのに、親しくなろうとか、どうかしてる」


もし何かが起きて、万が一絆されたとしても……。


――――いや、ないな。



帰り際、『お気にちゃんが出来たら報告してね!』と満面の笑みで念押しされたが、あるわけないと一笑した。タラレバすら成り立たないのだから、晴士の期待に添えるわけがない。


一糸先生(●●●●)のキャラを保てば平穏は守られる。不毛な日々に厄介事はゴメンだ。