こちらをチラリとも見ようとしない態度。一方的な物言い。モッさんの全てが私を煽ってくるが、ここで感情的になったら負けだ。


「あなたにはわかりません」

「ガキの惚れた腫れたなんて、興味も沸かねーよ」


……は?


「なら余計なお世話ですよ。帰りますね、コーヒーありがとうございました」


この捨て台詞で、このタイミングで帰ろうと決めていた。でもできなかった。背を向けてすぐに、ため息とも笑い声ともつかない乾いた音が聴こえてきて、足が止まってしまった。


「どうせ、寝て覚めたら次のイケメンを追いかけんだろ。くだらねぇ」


背後から追い打ちをかけてくる冷たい声。なぜ、さっき会ったばかりの人に、ここまで言われないといけないのか。


口を結んで堪えると、喉の奥から込み上げてくる怒りで息苦しくなる。


「いちいち心砕いてても時間の無駄」


ぼとり、と泥のように重い呟きは、これまでのどれよりも“否定”だった。


「……何がわかんの……」

「は? 聞こえねぇ――」

「無駄って……そんなのわかんないじゃんっ!」


私の中で何かが弾けた気がした。

今日まで上手く処理できていたはずの思いが、どっと押し寄せてくる。


「大人っていつもそうだよね? 知った顔で偉そうに、何が正しくて、何が間違ってるかって。私が大事だって思ってても、必要ないモノだって切り捨てるよね?」


振り返ると、モッさんはいつの間にかこちらを向いていた。その素っ気なく頬杖をついた姿が、涙で歪んでいく。


「――んで。ねぇ、なんで本気じゃないって思うの?」