声を目で辿ると、石段に飾られた大きな鉢植えの陰に座っている人がいた。メガネを覆うほどのモサモサ頭の人だ。


「ぁ……モッさん……」

「は?」


咄嗟に出てしまった呼び名が聞こえたのか、聞き取れなかったのか。どちらにしろ、モッさんの声は不機嫌さを隠そうともしていなかった。


なんで……えっ、なんで?

いつから? 見られてた?


予想外な人物の登場にあ然としていると、頭を抱えたモッさんが荒々しくため息を吐く。


「おい聞いてる? 終わったんならそこどけ。店に戻れんし、寒い」

「……すみません」


無意識のうちに出た謝罪は、威圧的なモッさんに対する苛立たしさと、少しの恥ずかしさが入り混じっていた。


「高校生になるんだったら他人の迷惑くらい考えれんだろ? つまんねぇ話のために入り口塞ぐなよ」


私の雑な謝罪が癇に障ったのか、モッさんの靴音が近づくにつれ、その口調も強くなっていく。


「おーい、聞いてる?」

「…………ッ」

「って、号泣かよ」


目線を合わせるように私の側で屈むと、モッさんは頭を傾げた。思わず顔を背けても、さきほどの不機嫌さとはまた違う嫌悪感がひしひしと伝わってくる。


「はぁ……なんで公衆の場でそんな泣くかな。だからガキは――」


モッさんの嫌味はそこで止まった。というより、ガラガラと重い引き戸の音が遮った。それが何を意味するのか瞬時に察してしまい、急加速した鼓動の波がこめかみを打つ。