「なに今の! ホントにホントに別れたの?」

「うん。ほんとにほんと」


不審がるカンナを横目に、唐揚げを取り分ける。しかし、まだ食うな、と言わんばかりに肩に手を置かれた。


「じゃあ、やっぱあの話ってマジ?」


“あの話”が何を指すのか、全くわからない。


首を傾げた私に対し、カンナは苦い顔をした。たぶん、イイ噂ではないのだろう。


「……嫌いで別れたわけじゃないから、今は誰とも付き合う気はない」

「…………」

「卒業式の日、萩原が2年の子に言ってたんだって」


話が進むに連れて、徐々に大人しくなっていくカンナの声。それはまるで、触れてはいけない部分を手探りで確認しているかのようだった。


「へぇ。安定の人気だね」

「いやいや、コッチからしたら、は?だよ。別れたなんて知らないしさっ! 芙由がいるのに、何いっちょ前に告られてんだよって感じだし、そもそも別れたって何?って思うじゃん!」


私の受け答えが悪かったのか、はたまた、会話の途中でウーロン茶を飲んだのがいけなかったのか。一転してヒートアップし始めたカンナを落ち着かせるために、こちらはあえて飄々とした態度を貫く。


「あぁ、それで別れたことが広まっちゃったんだ?」


――――くだらない。


「言いたいのはそこじゃないよ! 嫌いじゃないのに別れるとかある!?」


――――なぜ別れたか、か。


そんなの、他人に話して何になる? 付き合うきっかけも、思い出すたびに顔がニヤける出来事も、別れる理由も。誰かに報告するのは共有したいからであって、私は他の誰とも共有したくない。……全部、自分だけのモノだ。