フェンスを背に並んで腰を下ろすと、ランチの準備をしつつ、気になっていた疑問をぶつけてみる。


「兄ちゃんに聞いた。2年前に同じことやったんだって」

「成弥くん達は使ってないの?」

「んにゃ、去年までは使ってたらしいよ。でも3年は無敵だからもう要らないってさー」


なんとも成弥くんらしい。常に自分が主人公で、楽しければオールオッケーで。


「他の子達が来ないように、『不良が溜まってる』とか『オバケ出る』とか、ウワサまで流して確保したんだって。だから、もったいないし使えって言ってたよ」


補足情報に疑問符が過ったせいか、吸い上げたカフェラテが喉を通りながらゴクリと鳴った。


「……あのさ、最初からここに来れば良かったよね?」

「え? 兄ちゃんのおさがりって何かイヤじゃん?」

「兄弟いないし、それわかんない」


説明されたところで腑に落ちない。さっきまでの努力は何だったのか。


私の視線に気づいたカンナは、サンドイッチを頬張りつつ、にんまりと笑った。


「まーいいじゃん! それより芙由も食べな」


呆れながらも、私もサンドイッチのフィルムを開ける。何はともあれ、榎本兄妹のおかげで自分達だけの場所が出来たのは事実だ。


「――――あ」


ふいに目の前の扉が動き、サンドイッチのために開いた口から声が零れた。


「あれ? ……何だか今日は縁があるみたいですね」


こんな縁があってたまるか、とすぐさまカンナを小突く。


「春先生! なんでココにいんのー?」

「ここは僕の秘密の場所だったんですけどね。先客が居るとは思いませんでした」